人が深く傷つくのは、反応が返ってこないから
夫婦の会話が
いつのまにか減っていた。
スマホばかり見ている背中に
話しかける。
「ねえ、聞いてる?」
少し間をおいて、返ってくる。
「うん」
でも、目はスマホから離れない。
相手はいる。
返事も返ってくる。
なのに
ひとりでいるみたいに感じる。
少しでも話そうとして
話しかけた言葉が
そのまま流れていく。
無視されている
とまでは言えない。
でも
わたしたちのことが。
わたしのことが。
大事なものとして
扱われていない感じは、残る。
そんな時間が、積み重なっていく。
話しかけても、ちゃんと返ってこない
返ってくるのは、短い言葉だけ。
「うん」
「別に」
「あとで」
会話は、そこで終わる。
そんなやり取りが繰り返されると
話しかけることが少なくなっていく。
今、言わなくてもいいか。
また、同じ感じになるかもしれない。
すると
本当は聞いて欲しかったこと。
一緒に笑いたかったこと。
そんなことが
ふたりの間から消えていく。
相手とつながっている感じも
弱くなっていく。
苦しいのは大切にされていないと感じるから
「ちょっと、聞いてもらいたいことがあるんだけど」
顔も見ないまま
返ってきたのは
「あとじゃだめ?」
わたしが聞いてほしいことより
先にすることって何?
わたしの話は
あなたにとって後回しなんだ。
そう感じてしまう。
苦しいのは
話を聞いてもらえなかったからじゃない。
わたしは
大切な存在として扱われていない。
そう感じるから。
本当は
どうしてほしかったんだろう。
今日あったことを
少し聞いてほしかったのか。
「それは大変だったね」って
言ってほしかったのか。
一緒に笑ったり、驚いたり。
以前のように
そんな時間を過ごしたかったのか。
でも
今感じるのは
わたしのことに興味がないんだ
という感覚。
会話が少ない
という苦しさじゃない。
わたし自身が
重要な存在として扱われていない感じ。
それが
不安を大きくしていく。
この人の中に
わたしはちゃんといるんだろうか。
喧嘩してるほうがまだマシ
何を話しても
わたしのことが
大切に扱われていない感じがする。
すると
怒られてもいいから
反応してほしい。
そんな気持ちになってしまう。
嫌な顔をされたとしても
わたしがここにいると
感じられるほうが、ずっとマシ。
そう思ってしまう。
本当は
優しくしてほしかった。
笑ってほしかった。
一緒に
気持ちを分かち合いたかった。
でも
何も返ってこないことが続くと
わたしのことはどうでもいいんだ。
そんな言葉が
本当のことに思えてくる。
だから
強く言ってしまったり。
何度も話しかけたり。
わざと
相手の反応を引き出そうとしてしまう。
喧嘩がしたいわけじゃない。
ただ
わたしのことを
無かったことにしないでほしい。
大切に扱われていないと感じる苦しさ
話を聞いてくれない。
反応が薄い。
会話が続かない。
苦しかったのは
その出来事のせいじゃない。
そのたびに
わたしのことは大事じゃないんだ
という感覚が積み重なっていく。
反対に
笑ってくれる。
驚いてくれる。
「それは大変だったね」って言ってくれる。
そんな反応が返ってくると
わたしは、ちゃんと見てもらえている。
気にかけてもらえている。
そう感じられる。
返ってくる反応を通して
わたしは
自分がどんなふうに扱われているかを感じとっていた。
だから
ただ会話をしたいわけじゃなかった。
あなたにとって
わたしは大切な存在なんだ。
そう感じられることを
求めていた。
スマホの話だと思っていた
最初は
スマホの話だと思っていた。
スマホを置いてくれれば。
ちゃんと顔を見てくれれば。
そうすれば
この苦しさは消えるはずだと
思っていた。
でも、たぶん
そうじゃない。
スマホは
きっかけにすぎなかった。
その奥で
わたしがずっと感じていたのは
もっと静かで
もっと深いところの感覚だった。
わたしは
この人にとって大切な存在なんだろうか。
ちゃんと
この人の中にいるんだろうか。
会話が減ったことや
スマホを見ていることは
その一番外側に見えていたものにすぎない。
本当の苦しさは
もっと奥にあった。
そして
その奥にあるものには
ちゃんと名前がある。
理由がある。
構造がある。
「なぜこんなに苦しかったのか」は
気のせいでも
考えすぎでもない。
それを知ることは
苦しさを消すためではなく
自分が何を感じていたのかを
やっと自分でわかってあげるためのものだ。
よくあるご質問
-
パートナーがスマホばかり見ていると、どうしてこんなに気になるのでしょうか?
-
おそらく
相手に悪気がないことに
気づいているからではないでしょうか。わざと無視されているなら
まだ怒れます。でも
相手はただスマホを見ているだけで
あなたを傷つけようとしているわけではない。悪気がないからこそ
「これくらいで傷つくほうがおかしいのかもしれない」と思ってしまい、言い出せなくなる。その言えないということが
苦しさを長引かせているのかもしれません。
-
話しかけても「うん」「あとで」「別に」という返事ばかりで、無視されているように感じるのはどうしてでしょうか?
-
その返事に
あなたへの関心が感じられないからではないでしょうか。そして
そう感じている自分を
「大げさなんじゃないか」と責めてしまっていませんか。たった一言の返事で傷つく
自分は心が狭いのかもしれない。そんなふうに
傷ついたことそのものより
傷ついた自分を責めることのほうが
苦しくなっていることがあります。
-
本当は気にかけて欲しい、優しくして欲しいのに、喧嘩になってしまうのはなぜでしょうか?
-
何も返ってこないことが続くと、怒りでもいいから反応が欲しくなってしまうからではないでしょうか。
ただ、喧嘩のあと、ふと虚しくなることはありませんか。
反応は得られた。
でも、欲しかったのはこれじゃなかった。求めていたのは
ぶつかり合うことではなく
大切に扱われていると感じられること。その空振りの感覚が
喧嘩のあとに残るのかもしれません。
投稿者プロフィール

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公認心理師(登録番号 第45405号)
一般社団法人メンタルヘルス協会上級心理カウンセラー
日本マイブレス協会認定ブレスプレゼンター
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