夫婦で話し合えない本当の理由

「話し合ったほうがいい」

それは
もう何度も考えてきたことだと思います。

関係が冷えていることにも
気づいている。

このままではよくない
という感覚もある。

だからこそ、あなたは
このページを読んでいるのではないでしょうか。

仕事では話し合えてきた。

学校でも意見を交わすことに
困った記憶はない。

必要な場面では
言葉を使って調整してきた。

それなのに
夫婦の間では話し合えない。

必要性は感じているのに
どうしても、その場に向かえない。

このコラムでは
なぜ多くのご夫婦が
話し合いの必要を感じていながら
話し合えなくなっているのか。

その理由を
カウンセリングの現場で見てきた
実感をもとに言葉にしています。

「どうして自分は
夫婦の話し合いになると
止まってしまうのか」

その理由に
思い当たるところがあるかどうか
確かめるつもりで
読み進めてみてください。

このページの目次

なぜ夫婦の話し合いは、別物になるのか

仕事や学校では
話し合いが必要な場面に
ある程度の型があります。

議題があって
目的があって
どこまで話せばいいのかが
最初から見えている。

だから、意見が違っても
話し合いそのものが
成立しなくなることは、あまりありません。

一方で
夫婦の話し合いは、そうはいきません。

「話し合おう」と言われたとき
何について話すのかが
はっきりしない。

どこまで踏み込むのかも
わからない。

話し合った結果
何が変わるのか
それとも何も変わらないのか。

その見通しが持てないまま
話し合いの場に向かうことになります。

さらに、夫婦の話し合いでは
仕事で慣れてきたやり方が
そのまま使えません。

整理する。
結論を出す。
正しさを並べる。

そうした進め方が
かえって関係をこじらせてしまうこともある。

「話し合えば分かり合えるはずだ」
そう思ってきた人ほど
このズレに戸惑います。

必要性は感じている。
向き合わなければいけないことも
わかっている。

それでも
夫婦の話し合いになると
足が止まる。

それは
話す力が足りないからでも
言葉が出てこないからでもありません。

夫婦の話し合いは
これまで経験してきた話し合いとは
前提も、進め方も、目的も違うものだからです。

では
夫婦の話し合いは他の話し合いと
何がどう違うのでしょうか。

その違いについて
次で書いています。


話し合うことで、何が起きてしまうのか

夫婦の話し合いが
うまく進まなくなるとき
多くの場合
最初から議題が揃っていません。

片方は
「最近の態度が気になっている」
というつもりで話し始める。

もう片方は
「また責められるのではないか」
という前提で話を聞く。

この時点で
二人が話している内容は
同じではありません。

さらに話が進むと
出来事についての話だったはずが
過去の出来事や
以前のやり取りが持ち出される。

「この前のこと」と言いながら
実際には
「前からずっと感じていたこと」
が混ざってくる。

すると
何について話しているのかが
本人たちにも分からなくなっていきます。

仕事の話し合いなら
「それは今回の議題ではない」と
線を引くことができます。

けれど夫婦の話し合いでは
その線が引けません。

なぜなら
話している内容そのものが
二人の関係と切り離せないからです。

話し合うことで
相手の考えだけでなく
自分がこれまでどう関わってきたのかも
否応なく浮かび上がります。

「そこまで考えていなかった」
「そんなつもりはなかった」

そうした言葉が出てくるのは
話し合いの途中で
自分の立場が想像以上に
露わになるからです。

夫婦の話し合いが
別物に感じられるのは
話し合いの中で
内容だけでなく
関係そのものが動いてしまう
からです。


なぜ、夫婦の話し合いが難しいのか

多くの人は
夫婦の間でも
「話し合いは必要なものだ」という考えは、持っています。

それでも
いざ夫婦の話し合いとなると
どこまで話せば終わりなのかが分からない。

その背景には
これまでの人生の中で
夫婦が向き合って話している場面を
実際に見たり

体感したりする機会が
ほとんどなかった

という事実があります。

育ってきた家庭で
両親が意見の違いに直面したとき
どんなやり取りをしていたのか。

感情が出てきたとき
それをどう扱っていたのか。

そうした場面を
日常の中で見てきた人は
決して多くありません。

むしろ

・どちらかの意見が通って終わる
・片方が黙って引く
・話し合いはせず、あとで衝突する

そういう姿を見てきた人が
ほとんどではないでしょうか。

その場合
「夫婦で話し合う」ということが
身についていません。

頭では必要だと分かっていても
体験としてはない。

だから
仕事や学校で身につけてきた
話の進め方を
そのまま持ち込もうとします。

けれど
それは夫婦の場面では噛み合わない。

噛み合わなかった経験だけが残り
次に向き合おうとするとき
自然と足が止まる。

夫婦の話し合いが
難しく感じられるのは
見たことも

教わったこともないまま
その場面に直面する。

その状況そのものが
難しさを生んでいます。


まとめ

夫婦の話し合いができなくなったとき
多くの人は

  • 「性格が合わないからだろうか」
  • 「価値観が違うからだろうか」
  • 「コミュニケーションがうまくいかないからだろうか」

そんなふうに考えます。

けれど
カウンセリングの現場で
話を聞いていると
それだけでは説明しきれない感覚を
抱えている人が少なくありません。

いざ夫婦の話し合いとなると
どこまで話せば終わりなのかが分からない。

何を目指して話せばいいのかが見えない。

そのまま向き合うことに
戸惑いを感じている。

背景をたどっていくと
「夫婦で話し合う姿」を見たり
具体的なやり方を教わったりする機会がないまま
大人になっているケースが多くあります。

親の関係を思い返してみても
どちらかが譲って終わる場面や、
衝突だけが強く残っている場面しか思い浮かばない。

そういう姿を見てきた人が
ほとんどではないでしょうか。

「夫婦で話し合う」ということが
具体的な形として
身についていないまま
自分の関係の中で
向き合わざるを得なくなる。

夫婦の話し合いが
難しく感じられるのは
価値観が違うからでも
気持ちが足りないからでもなく
その状況そのものが
大きく影響しています。

ここまで読んで
「話し合えない理由」が伝わっていれば
このコラムがお役に立てたのかもしれません。


よくあるご質問

 夫婦の話し合いができないのは、性格が合わないからでしょうか?

性格だけで説明できるケースは多くありません。

話し合う必要性を感じている人ほど
「合わないから話せない」と
言い切れない感覚を抱えています。

性格の問題に
見えていることの背景に
別の理由が重なっている場合も少なくありません。

 価値観が違う夫婦は、話し合いができなくなるのでしょうか?

価値観が違うこと自体が
話し合いを難しくしているとは限りません。

実際には
価値観の違いに気づいたときに
どう向き合えばいいのかを知らないまま
話し合いの場面に立たされている
ケースも多く見られます。

コミュニケーションが苦手だから、話し合えないのでしょうか?

仕事や学校では話し合えてきた人が
夫婦の間だけうまくいかなくなることは珍しくありません。

夫婦の話し合いは
これまで経験してきた話し合いと
前提や目的が大きく異なります。

その違いを知らないまま
向き合うことで
うまくいかないと感じることがあります。

話し合おうとすると、避けたくなる自分はおかしいのでしょうか?

話し合いの終わりが
見えないまま向き合うことに
不安や戸惑いを感じる人は
少なくありません。

何を話し
どこで終わればいいのかが
分からない状態で
向き合うこと自体が
避けたくなる感覚につながることがあります。

何度も話し合いがうまくいかなかった経験があります。それでも、話し合った方がいいんでしょうか?

多くの人が
同じところで迷います。

話し合ったほうがいいとは思う。
けれど
またうまくいかなかったらどうなるのか。

何を目指して話せばいいのかも
はっきりしない。

そう感じたまま
立ち止まっている人も少なくありません。

この段階で大切なのは
「話し合うべきかどうか」を決めることよりも
なぜこれまでの話し合いが
うまく成立しなかったのか。

その背景を知ることです。

話し合いを重ねる前に
まず整理が必要な場合もあります。



話し合えないことを
どちらかの一方の問題として
整理しようとすると
かえって分からなくなることがあります。

このページで扱ったのは
「うまく話せない自分」や
「相手の態度」ではなく
その場に立たされたときに
何が起きていたのかという視点です。

ここまで読んで
見え方が少し変わったところがあれば
それだけで十分かもしれません。

「話し合えない」状態が続くと
やがて会話そのものを避けるようになるケースもあります。

投稿者プロフィール

山口 晃歓
山口 晃歓
公認心理師(登録番号 第45405号)
一般社団法人メンタルヘルス協会上級心理カウンセラー
日本マイブレス協会認定ブレスプレゼンター